老後資金の準備として、投資信託や株式投資を検討されている方も多いのではないでしょうか。しかし、投資をする上で無視できないのが「為替の変動」です。ここでは、円高や円安が私たちの老後資金や投資にどのような影響を与えるのか、そしてどのように対応すれば良いのかを分かりやすく解説していきます。
外貨建て資産(米国株や海外投資信託)への影響
老後資金の資産形成で、米国株や海外の投資信託を選んでいる方も多いです。これらの資産は、円高や円安の影響を直接的に受けます。
円高のとき
円高になると、既に持っている外貨建て資産の円換算での価値は下がってしまいます。例えば、1ドル150円のときに1万ドル分の資産を持っていた場合、円高が進んで1ドル100円になると、その価値は150万円から100万円に目減りしてしまいます。しかし、これは「今から新しく外貨建て資産を買う」人にとってはメリットです。円を基準に考えると、安く外貨を仕込む絶好のチャンスとなります。
円安のとき
円安になると、既に持っている外貨建て資産の価値は円換算で増えます。1ドル100円の資産が1ドル150円になると、100万円だった資産が150万円に増えます。これは嬉しい点ですが、これから新しく外貨建て資産を購入しようとすると、割高になってしまいます。
国内株式や投資信託への影響
為替の変動は、国内の資産にも影響を及ぼします。特に企業の業績を通じて、株価に影響が出やすいです。
円高のとき
円高は、海外に製品を輸出している企業にとってはマイナスに働きます。海外で稼いだ利益を円に戻すときに、利益が減ってしまうためです。そのため、トヨタやソニーといった輸出企業が多い日本の株式市場全体には、マイナスの圧力がかかりやすい傾向があります。
円安のとき
円安は、輸出企業にとっては大きな追い風となります。海外での売上を円換算すると、利益が大きく増えるからです。このため、日本株全体の投資信託は、円安のときに株価が上がりやすい傾向が見られます。一方で、食品や小売、電力など、原材料や燃料を輸入に頼っている内需中心の企業にとっては、コストが高くなるため逆風となります。
債券投資における為替リスク
老後資金を安定させるために、債券に投資する人もいます。特に海外債券を持つ場合、為替の変動リスクが非常に重要です。
円高が進むと、海外債券の円換算評価額は下がってしまいます。逆に円安が進むと、円換算評価額は上がります。為替の変動は、債券から得られる安定収入を大きく左右する要因となりますので、老後資金の「安定収入」を目的に海外債券を保有する場合は、為替リスクを十分に考慮する必要があります。
老後生活における実生活への影響
資産運用だけでなく、為替は日々の生活にも影響を与えます。
円安のとき
食料やエネルギー、医薬品など、輸入に頼っている生活必需品の値段が上がりやすくなります。生活費が増えてしまうため、資産運用でこのコスト増をカバーする必要性が出てくることも考えられます。
円高のとき
輸入品が安くなり、私たちの生活は助かります。しかしその反面、外貨建ての投資資産の円換算評価額が下がりやすいというデメリットがあります。
老後資金の運用で大切な3つのポイント
為替の変動はコントロールできませんが、為替リスクを考慮した資産運用は可能です。老後資金の運用で特に大切にしたい3つのポイントをご紹介します。
1. 為替リスクを分散する
為替リスクを一つの通貨に集中させないことが大切です。外貨建ての資産と国内の資産の両方を持つことで、リスクを分散できます。
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外貨建て資産を持っていると、円安になったときの生活費上昇を資産価値の増加でカバーできる可能性があります。
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国内資産を持っていると、円高になったときでも資産価値が比較的安定しやすいです。
2. 投資信託の「為替ヘッジ」を活用する
投資信託には「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」というタイプがあります。
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ヘッジあり:為替の変動による影響を抑えることを目的としています。為替変動リスクを取りたくない、安定志向の方に向いています。但し手数料を取られます。
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ヘッジなし:為替変動の影響を直接受けます。円安のときに大きなリターンを狙いたい、リスクを取って積極的に資産を増やしたい方に向いています。
3. 積立投資(ドルコスト平均法)を活用する
定期的に一定額を投資する「積立投資」は、為替変動のリスクを分散するのに有効な方法です。円高のときは安く多く購入でき、円安のときは少なくなるため、購入価格が平均化されます。これにより、為替のタイミングを気にすることなく、長期的な視点で資産形成を進めることができます。
まとめ
円高は「外貨資産の価値が目減りする」というデメリットがありますが、「これから投資を始める絶好のチャンス」でもあります。一方、円安は「外貨資産の価値が増える」というメリットがありますが、「日々の生活コストが上がる」点に注意が必要です。
老後資金の準備では、為替リスクを分散しながら、**「生活防衛」と「資産成長」**をバランス良く両立させることが大切です。今回ご紹介したポイントを参考に、ご自身のライフプランに合った運用を考えてみてください。
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