なぜ政府は老朽インフラに投資する?アメリカ経済政策の狙いと今後の波及効果

米国経済

インフラの問題が色々ありますが、今回は、アメリカのインフラに関する状況を調べていきたいと思います。

生産性の底上げと経済成長の土台づくり

アメリカ政府が老朽インフラに投資する理由の一つは、長期的な生産性向上です。古くなった道路や橋、鉄道、港湾、上下水道は物流や経済活動のボトルネックになります。これらを更新・改良することで、輸送効率が高まり、企業活動や地域経済の生産性を押し上げることができます。特に米議会予算局の試算では、公的資本を1%増加させると潜在GDPが平均0.08%押し上がるとされています。

安全性と災害リスクの低減

もう一つの重要な目的は、安全性の確保と災害リスクの軽減です。アメリカでは過去10年間で10億ドルを超える大規模災害が頻発し、その累計コストは1.4兆ドルに達しています。事前の減災投資は1ドル当たり6ドルの便益があるとされ、堤防や下水道、送配電網の強化は最も費用対効果の高い公共投資の一つです。

渋滞・物流コストの削減

全米の渋滞による経済損失は年間2,000億ドル規模にのぼります。港湾や幹線道路の改良、交差点の再設計などは輸送時間の短縮と燃料コスト削減に直結し、温室効果ガス排出削減にもつながります。これにより企業の在庫管理や配送の信頼性が向上します。

デジタル格差の解消と地域活性化

政府はBEADプログラムにより、全州・準州でブロードバンド整備計画を推進しています。高速インターネットの普及は遠隔医療やオンライン教育、中小企業のデジタル化を後押しし、地方の生産性を底上げします。これにより都市部と地方の経済格差是正にも寄与します。

公共財としての基盤整備

水道管や下水処理施設などは民間では採算が取りにくいため、公共財としての整備が必要です。老朽化した水道管は年間26万件の破断が発生しており、これらの更新は衛生面や生活の安定に直結します。

主要プログラムと最新動向

2021年に成立したインフラ投資・雇用法(IIJA)は総額1.2兆ドル規模で、道路、橋、上下水道、広帯域通信、災害レジリエンス向上に重点投資を行っています。また、EV充電網整備や環境審査の迅速化、国産材優先の調達方針など、多方面で実施が進んでいます。

2025年以降の波及効果

インフラ投資の効果は短期的な景気刺激にとどまらず、中長期的には潜在成長率の押し上げや災害コストの削減、地域再開発の促進、デジタル包摂による地方経済活性化など、幅広い波及が期待されます。一方で、建設労働力不足や資材価格の上昇、維持費確保の課題も存在し、政策の一貫性が求められます。

まとめ

政府が老朽インフラに投資するのは、単なる景気対策ではなく、長期的な経済の供給力を強化するためです。生産性向上、安全性確保、デジタル格差是正、災害リスク低減といった多面的な効果が見込まれ、これらはアメリカ経済の持続的成長の土台を築く重要な政策となっています。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました