こんにちは!ファイナンシャルプランナーの原口です。
今回は、2025年に大きく変わったアメリカの税金の話を、できるだけやさしく解説します。
「税金」と聞くと難しく感じますが、実は私たちの生活や、働いている会社に直接関係がある、とても大事なことです。特にアメリカでは「One Big Beautiful Bill Act(OBBB)」という新しい法律ができて、個人や企業の税金がどう変わったのか、全体像から見ていきましょう。
そもそもアメリカの減税政策って何?全体像を見てみましょう
2025年7月4日に成立した「OBBB」は、2017年の「減税・雇用法(TCJA)」という大きな税制改革をさらに発展させたものです。これにより、一時的だった減税の多くが、恒久的なものになりました。
簡単に言うと、個人の方には「所得税率が下がったままになり、控除も増える」、企業には「法人税率が低いままで、投資をするときの税金がさらに減る」という設計になっています。
この減税政策は、個人の手元に残るお金(可処分所得)を増やし、企業がより活発に投資や雇用を増やせるようにすることが目的です。
個人の生活にどう影響する?家計にうれしい3つのポイント
この政策が私たちの毎日の生活にどう関係するのか、特に大切なポイントを3つご紹介します。
1. 所得税率が低いまま続く
これまでは期限付きだった7つの所得税率(10%から37%まで)が、今回の法律で恒久化されました。つまり、これまでと同じ収入でも、税金が大きく増えてしまう心配が少なくなります。お給料から引かれる税金が抑えられ、家計が助かる仕組みが続きます。
2. 標準控除が大きくなる
税金を計算するときに、収入から差し引ける「標準控除」という金額が大きくなったまま続きます。控除が大きければ、その分、税金がかかる収入(課税所得)が減るので、結果的に税金が安くなります。また、この標準控除を使うと確定申告が簡単になるというメリットもあります。
3. 子どもがいる家庭の児童税額控除が拡充される
子育て世代にとって大きなニュースです。2025年から、子ども一人あたり2,200ドルの税額控除が受けられるようになります。これは、税金から直接差し引ける金額なので、とても効果が大きいです。ただし、社会保障番号(SSN)が必要になるなど、要件が明確になりました。
企業はどうなる?投資がしやすくなる2つの変更点
次に、企業側のメリットを見ていきましょう。企業への減税は、私たちが働く環境や、将来の雇用にも影響します。
1. 法人税率は21%のまま恒久化
法人税率は、以前の35%から21%に下がったまま、これが永続的なルールになりました。企業が稼いだ利益にかかる税金が低いままであれば、そのお金を新しい事業への投資や、従業員のお給料に回しやすくなります。これは、アメリカ国内のビジネスをさらに活発にするための大きな追い風です。
2. 設備投資の即時償却を再び強化
企業が新しい機械や設備を買ったとき、その費用をすぐに全額経費として計上できる「即時償却」というルールが復活しました。2025年1月から2029年末までに購入した特定の設備が対象です。これにより、新しい設備への投資をためらっていた企業が、積極的に投資できるようになり、より良い製品やサービスが生まれやすくなります。
結局、誰にどんなメリットがある?超ざっくり例で解説
複雑な税金の話を、もう少し具体的に見てみましょう。
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年収8万ドルの独身、子ども1人の場合 → 所得税率が低いままな上に、大きな標準控除と、子ども1人につき2,200ドルの児童税額控除が受けられます。結果的に、使えるお金が年間で数百ドルから千ドル以上増えるイメージです。
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年収50万ドルの夫婦で高税率州に住んでいる場合 → 州や地方の税金は、これまでは連邦税の控除額に上限がありましたが、その上限が2025年に4万ドルに引き上げられます。これは、税金の高い州に住む高所得者にとって、税負担が目に見えて軽くなる可能性があります。
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中小の製造業の場合 → 法人税率が21%のままで、さらに新しい機械を買ったときにすぐに全額を経費にできるので、新しい生産ラインの導入などが非常にしやすくなります。
いいことばかりじゃない?減税の裏にある注意点
減税は私たちにとってうれしいことですが、国全体で考えると、注意しなければならない点もあります。
減税によって、政府の税収は減るため、国の借金(財政赤字)は増えやすくなります。専門家によると、短期的には経済を押し上げる効果がある一方で、長期的に見ると赤字の拡大が原因で経済成長が鈍る可能性も指摘されています。
これは、国の金利や為替、株価など、さまざまなところに影響を与える可能性があるため、長期的な動向にも注意が必要です。
よくある疑問を解消するQ&A
Q. 一番得をするのは誰ですか?
A. 児童税額控除が拡大されるため、子どもがいる中間所得層が大きな恩恵を受けると考えられます。また、SALT控除の上限が引き上げられることで、税率の高い州に住む高所得者もメリットが大きいです。
Q. 企業が減税で得たお金は、どう使われますか?
A. 企業によっては、新しい投資や雇用、従業員の賃上げなどに使われることが期待されます。しかし、一方で自社株の買い戻しや内部留保に回すケースもあり、その効果は企業によって異なります。
Q. このルールはいつまで続きますか?
A. 多くのルールは恒久化されましたが、SALT控除の上限引き上げは2025年から2029年までの期間限定です。将来的に、政権や議会の状況によって再び変更される可能性はあります。
まずは何をチェックすべき?
今回の減税政策を自分に当てはめて考えるための、簡単なチェックリストです。
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家族構成と州税の状況
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子どもがいて、児童税額控除(CTC)の対象になるか。
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住んでいる州の税率が高く、SALT控除拡大のメリットがあるか。
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自営業者・フリーランスの方
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事業所得の最大20%を控除できる「199A控除」の対象になるか。
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企業を経営されている方
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設備投資の計画を立てる際、即時償却のルールが適用できる期間を意識する。
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このブログ記事が、少しでも皆さんの税金やお金に関する理解を深めるお役に立てればうれしいです。
この内容について、さらに知りたい部分や、もっと詳しく解説してほしい点があれば、ぜひ教えてくださいね。
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