インフレ再加速の主因はトランプ関税か:ビジネス界の声

インフレ再加速の主因はトランプ関税か:ビジネス界の声 米国経済
インフレ再加速の主因はトランプ関税か:ビジネス界の声

米国のインフレについて考えていきます。何か感想や意見があればよろしくお願いいたします。

はじめに

2025年7月15日に米国労働省が発表した6月の消費者物価指数(CPI)は、前月比プラス0.3%、前年同月比プラス2.7%と、5月から加速していることが確認されました。特に、食料とエネルギーを除くコア指数も上昇幅が拡大し、インフレの再加速傾向が顕著になっています。このインフレ再加速の背後には、ドナルド・トランプ前大統領による関税政策が大きく影響しているとの見方が、ビジネス界やマーケット関係者の間で広まっています。この「トランプ関税」がインフレに与える影響について、各界の見解を詳しく整理していきます。

小売業界が示す消費者負担増大への懸念

米国の小売業界からは、トランプ関税が消費者の家計に与える影響に対する強い懸念が表明されています。米国小売業リーダー協会(RILA)のマイケル・ハンソン上級副会長は、「大統領の関税政策は全家庭の家計に打撃を与え、これ以上の値上げに耐える余裕はない」と強く警告しています。また、全米小売業協会(NRF)のデービッド・フレンチ政府渉外担当EVPも、「関税引き上げは企業と消費者に不安と不確実性を拡大させる」と指摘し、ホワイトハウスに対して政策の見直しを求めています。

ある調査によると、回答者の76%が関税による物価上昇を懸念しており、75%が政府にインフレ対策を最優先するよう求めていることが明らかになりました。一方で、貿易赤字削減を重視すべきとの意見は37%に留まり、インフレ抑制への関心の高さがうかがえます。

輸入依存品目の価格転嫁が財部門を押し上げる

インフレ再加速の具体的な要因として、輸入依存度の高い品目における価格転嫁が挙げられています。6月のコア財部門のCPIは前月比プラス0.7%と、5月のプラス0.3%から大きく加速しました。特に、家電製品がプラス1.9%、玩具がプラス1.8%、パソコンおよび周辺機器がプラス1.4%など、多くの輸入依存品目で広範な価格上昇が見られています。これは、関税引き上げによって生じたコストが、最終的に小売価格に転嫁された結果であると分析されています。

伊藤忠経営研究所も、家具や家電といった輸入消費財の価格上昇が財価格全体を押し上げていると指摘しています。自動車に関してはまだ価格上昇は抑制的ですが、もし輸入自動車への関税分が価格に転嫁され始めれば、さらなる上昇圧力がかかる可能性があると予測されています。

マクロ経済視点でのインフレ率押し上げ試算

トランプ関税がインフレ率全体にどれほど影響を与えるかについて、マクロ経済の視点からの試算も行われています。ロイターBreakingviewsが報じたボストン地区連銀の研究によれば、メキシコ・カナダ製品への25%関税と、中国製品への追加10%関税が、インフレ率を最大0.8ポイント押し上げる可能性があるとされています。

さらに、イェール大学予算研究所の試算では、すべての関税を考慮に入れた場合の平均実効関税率の上昇が、短期的に物価水準を2.3%押し上げ、一世帯あたり約3,800ドルの購買力を奪うとの分析も発表されています。これらの試算は、関税が無視できないレベルで家計に負担をかける可能性を示唆しています。

金融市場とエコノミストの見解

金融市場やエコノミストたちも、トランプ関税がインフレに与える影響を注視しています。野村証券は、産業連関表分析に基づき、「関税影響を最も受けやすい21品目のうち17品目で価格が上昇し、コア財CPIが前月比プラス0.2%に加速した。今後数カ月間は、コア財のインフレがさらに加速するだろう」と予測しています。

大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、FRBのパウエル議長が「インフレはトランプ関税で夏にかけて強まる」との見解を示していることと整合的であると述べています。そして、このインフレ再加速が景気悪化を通じて世界経済にも波及するリスクがあるとして、警戒を呼びかけています。

トランプ政権の反応と今後の展望

CPIの発表後、トランプ大統領自身はSNSで利下げを要求するなど、連邦準備制度理事会(FRB)への圧力を強めています。しかし、金融市場では「関税の影響は一時的である」という楽観的な見方も根強く存在しているようです。シカゴ・マーカンタイル取引所の調査では、7月のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利が据え置かれるとの見方が多数派を占めています。

一方で、関税が輸入中間財の価格を通じてさらなるインフレ圧力を生み出すとの懸念も強く、財価格とサービス価格双方で物価の持続的な上昇リスクが残ると考えられています。

結論 インフレ再加速とトランプ関税の明確な関連性

2025年6月のCPI上昇の背後には、トランプ関税による輸入財価格の転嫁が明確に寄与しているとの見方が、ビジネス界やエコノミストの間で広く共有されています。特に小売業界からは、関税が消費者負担を増大させることへの強い警戒感が示されています。今後も、関税の動向がインフレ見通しにおいて重要な焦点となることは間違いありません。

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