年収帯別シミュレーション:関税で家計は年間いくら減る?

日本経済

もし関税が導入されたら、私たちの家計にはどのような影響があるのでしょうか?特に、年収帯によってその負担額はどのように変わるのか、具体的なシミュレーションを通じて詳しく見ていきましょう。

シミュレーションの前提条件

今回のシミュレーションでは、いくつかの重要な前提を置いています。

まず、家計の年間消費支出については、2018年のデータに基づき、所得を五分位(Q1からQ5)に分けて試算しています。これにより、所得階層ごとの消費支出の違いを考慮することが可能です。

次に、家計の消費支出に占める輸入品の比率を8.3%と仮定しました。これは産業連関表のデータに基づいています。私たちの日常生活で消費する商品の中に、どれくらいの割合で輸入品が含まれているかを示すものです。

そして、関税率は一律10%と仮定しています。これは現時点での一般的な関税率を参考に設定したものです。

これらの前提条件のもと、各所得階層の家計が年間でどれくらいの関税負担を負うことになるのかを計算していきます。

関税負担額の計算方法

具体的な計算方法をご紹介します。

各所得五分位の年間消費支出に、仮定した輸入比率8.3%を掛け合わせることで、「想定輸入支出」を算出します。これは、その所得階層の家計が年間でどれくらいの輸入製品にお金を使っていると見なせるかを示します。

次に、この「想定輸入支出」に、仮定した関税率10%を掛け合わせることで、「関税負担額」を導き出します。この金額が、もし関税が導入された場合に、その家計が年間で追加的に負担することになる金額です。

所得五分位別 関税負担シミュレーション結果

それでは、具体的なシミュレーション結果を見ていきましょう。

所得五分位(年収帯)

年間消費支出(万円)

想定輸入支出(万円)

関税負担額(万円)

第1五分位(~331万円)

225

18.7

1.9

第2五分位(331~454万円)

283

23.5

2.3

第3五分位(454~613万円)

314

26.1

2.6

第4五分位(613~851万円)

362

30.0

3.0

第5五分位(851万円~)

490

40.7

4.1

この表から、各所得階層で年間どれくらいの関税負担が増えるかが分かります。

シミュレーションから見えてくる主な知見

このシミュレーション結果から、いくつかの重要な知見が得られます。

まず、所得が最も低い層である第1五分位(年収331万円まで)の家計では、年間約1.9万円の負担増となることが分かりました。一方で、所得が最も高い層である第5五分位(年収851万円以上)の家計では、年間約4.1万円の負担増が見込まれます。

関税は消費支出額に比例して計算されるため、消費支出額が大きい高所得層のほうが、負担額は大きくなる傾向にあります。しかし、消費支出全体に占める税負担の割合が同じであったとしても、実質的な負担感は低所得層のほうが重く感じられる可能性があります。これは、税負担の「逆進性」と呼ばれる特徴です。所得が低いほど、税負担が家計に与える影響が大きくなることを意味します。

重要な注意点と今後の展望

今回のシミュレーションは、あくまで特定の仮定に基づいたものですので、いくつかの注意点があります。

輸入比率や関税率は仮定値であり、実際の品目別の比率や個々の関税率によって、負担額は大きく変動する可能性があります。例えば、食料品や日用雑貨など、所得階層によって消費する品目の構成は異なるため、より詳細な品目別の試算を行うことが望ましいでしょう。

この試算結果は、関税導入が家計に与える影響を所得階層別に把握するための第一歩となります。特に、低所得層の実質的な負担を軽減するための具体的な対策や、幅広い品目に対する影響をさらに詳細に分析していくことが、今後必要になってくるでしょう。

関税が私たちの生活に与える影響を理解し、より公平な社会を築くために、このようなシミュレーションは非常に重要であると言えます。

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